読　書

一般書 >　私と20世紀のクロニクル

・ ドナルド・キーン　著　・ 角地　幸男　訳　・ 中央公論社

　この本との出会いは、2006年3月、土曜日毎に掲載された紙面を毎回届けてくれた友のご好意のおかげである。 9回目から読み始め、山口晃氏の挿絵も合わせて日本、日本人、日本語をその都度意識し、尊敬と誇りなるものが 徐々に膨らんでいき、毎回届く紙面を楽しみにその年は終わったように記憶している。 そして、著者が日本国籍を 取得し日本にお住まいになるという事に対し、最初からもう一度読み返し敬意を表したくなった。
　日本国を日本人を日本語をこれほど愛している方を他に知らない。 日本人が自国を母国語を誇りに思っている人々はどれだけいるのだろうかと愚かな考えが過ぎった。 戦後世代、先生の教えに疑問を感じながらも反発できずに至った。 社会人となり世の中と接しながらも流されて生きてきたことを振り返れば過去に対し何も言えない立場にあると 自覚せねばならないだろうか。勿論、家族を守るため一生懸命生きて来た。そのことは当然であり人として当たり前のことである。 だが、心のどこかで魚の骨が喉に刺さったような思いを引きずってきた。 今や責任より権利が優先となり生活しやすくなったように見受けられるが割り切れない思いは募るばかりである。 故にこの著書は驚きの連続となり頭をガツンと殴られたような気持ちにさせられながらも士気は高まるばかりだった。

■2011.08.01
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