読　書

一般書 >　わが母の記

・ 井上　靖　著　・ 講談社

　壊れたレコード盤のように話をくりかえす。そのことに異常な程強い関心を持っていることに他ならない。 夜中に起きて誰かを探す。それは母親となり我が子を探しているのか、それとも子供になり母を探しているのか。 認知症が進んでいく母親を冷静にかつ穏やかな文章で描かれていく。
　本を手にしたときは当然の如く亡母を偲んでいた。そして、ページを捲る。 しかし、母と重ね合わせて読んでいたはずがいつの間にやら我が身とすり変わっていることに気づき愕然とする。 この世に生を受けたものとして遅かれ早かれ皆が逝くことになるであろうあの世とやら。 還暦が過ぎ、70代が間近となった己の身もいつ来ても不思議ではないはず。 「元気で死にたい」とそう願ってやまない想いはさらに強くなったような気がした。

■2012.08.01
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